🧩 MVU(Model-View-Update / Elm Architecture)
✅ このスタイルの概要
状態(Model)と画面(View)、状態更新(Update)を純粋関数とメッセージで結びつける UI 構造スタイル。
Elm によって有名になり、関数型フロントエンドの代表的アプローチとなった。
✅ 解決しようとした問題
MVVM まで来ても、次のような課題があった:
- 双方向バインディングが複雑になると状態の流れが追いにくい
- ViewModel が肥大化し、どこで何が変更されているか分かりづらい
- 非同期処理やイベントが増えるとロジックが分散する
MVU は、
「状態は 1 箇所に集約し、
すべての更新はメッセージを介して単一の Update 関数で扱う」
というシンプルな原則でこれに応える。
✅ 基本思想・ルール
● Model
- アプリケーションの状態を表すレコード / オブジェクト
● View
view : Model -> Html Msgのように、状態から UI(仮想 DOM)を生成する純粋関数- ユーザー操作は
Msg(メッセージ)として表現される
● Update
update : Msg -> Model -> Modelのように、
メッセージと現在の状態を受け取り、次の状態を返す純粋関数
● ループ構造
- Model をもとに View を描画
- ユーザー操作等から Msg が発生
- Update が新しい Model を返す
- 再度 View を描画
このループを回し続けることで UI が動作します。
✅ 得意なアプリケーション
- Elm や PureScript などの関数型フロントエンド
- Redux / TEA(The Elm Architecture)に影響を受けた React アプリ
- 状態遷移が多く、イベント駆動の UI
特徴:
- 状態の流れ(データフロー)が非常に明瞭
- デバッグ・タイムトラベルがしやすい
❌ 不向きなケース
- 関数型スタイルに慣れていないチーム
- 小さなフォーム中心の画面だけのアプリ(オーバーヘッドになりうる)
また、すべてを MVU に当てはめようとすると:
- Update 関数が肥大化する
- メッセージの種類が増えすぎる
といった課題もある。
✅ 歴史(系譜・親スタイル)
- Elm 言語が提唱したアーキテクチャ
- Redux や React Hooks など、多くのフロントエンド技術に影響
- MVVM / Flux などと同じく、UI 状態管理の一つの流派として広く認識されている
✅ 関連スタイル
- MVVM:バインディングベースの UI 構造
- Flux / Redux:単一ストア+リデューサーという構造が MVU に近い
- FRP / Reactive Streams:イベントストリームとしての UI モデル
✅ 代表的なフレームワーク
MVU(The Elm Architecture)は、関数型・宣言的 UI の世界で広く影響を与えている。
-
Elm
MVU の元祖となった言語/フレームワーク。Model/View/Updateの構造が明示されている。 -
React + Redux
単一ストアと Reducer による状態更新は、MVU の影響を強く受けている。 -
React Hooks(useReducer など)
stateとdispatchによる更新フローは、MVU 的な発想に近い。 -
SwiftUI / Jetpack Compose
単一方向データフローと宣言的 UI により、MVU に近いスタイルで UI を構築できる。
✅ このスタイルを支えるデザインパターン
MVU は形式的には関数型の構造だが、オブジェクト指向のデザインパターンで見ると次の要素が強く現れる。
-
State
単一の Model にアプリケーション状態を集約し、その変化によって振る舞いを変える。 -
Command
Msg(メッセージ)を「操作オブジェクト」として扱い、Update 関数で解釈する。 -
Observer
状態が変わるたびに View が再計算されるという意味で、Model → View の通知的な構造を持つ。
✅ まとめ
MVU は、
- 単一の状態
- 純粋関数による更新
- 宣言的な View
というシンプルなルールで UI を組み立てるスタイルである。
状態管理が複雑になりがちなモダンフロントエンドにおいて、
「すべての変更はメッセージを通じて単一の Update に集約する」 という発想は、
他のフレームワークやパターンにも大きな影響を与え続けている。