🧩 MVC(Model-View-Controller)
✅ このスタイルの概要
GUI / Web アプリケーションにおける Model / View / Controller の責務分割 を定義した、最古参の UI 構造スタイル。
✅ 解決しようとした問題
MVC が生まれた背景には、次のような課題があった:
- 画面操作のコードとデータロジックが混ざり、再利用・変更が困難
- 同じデータを複数の表示(View)で共有したい
- ユーザー操作(イベント)を整理して扱いたい
「見た目(View)とデータ(Model)、操作(Controller)を分離する」
ことで、UI 構造を整理しようとしたのが MVC である。
✅ 基本思想・ルール
● Model
- アプリケーションのデータとビジネスロジックを表現
- 状態を保持し、変更されたら View に通知する(Observer パターンなど)
● View
- Model の状態を画面に表示
- 可能な限りロジックを持たない(単なる描画)ことが理想
● Controller
- ユーザー入力(クリック、キー操作など)を受け取り、Model を更新したり View を切り替える
基本ルール(古典的な MVC)
- View は Model を監視し、変更があれば再描画
- Controller は View からのイベントを受け取り、Model に働きかける
Web フレームワークにおける「MVC」は、 本来の Smalltalk MVC とは解釈が異なることが多い点に注意(Controller=Router 的な役割など)。
✅ 得意なアプリケーション
- 単純な画面遷移とフォーム中心の Web アプリ
- わかりやすい責務分割を導入したい既存 GUI アプリ
- 小〜中規模の UI で、「とりあえず View と Model を分ける」ことが主目的のケース
❌ 不向きなケース
- 複雑な状態管理を伴う SPA / モダンフロントエンド
- 双方向バインディングやリアクティブプログラミングを多用する場合
- Controller の役割が肥大化しがちで、テストしづらくなるプロジェクト
今日の Web / モバイル開発では、 MVC の発想をベースにしたより洗練されたスタイル(MVP / MVVM / MVU)が採用されることが多くなっている。
✅ 歴史(系譜・親スタイル)
- 1970〜80 年代の Smalltalk から生まれた GUI アプリケーション向けパターン
- 多くのフレームワーク(Rails, ASP.NET MVC など)の思想的ベース
- MVP / MVVM / MVU など後継スタイルの“祖先”
✅ 関連スタイル
✅ 代表的なフレームワーク
MVC は歴史的にもっとも広く知られた UI 構造スタイルのひとつで、多くの Web / GUI フレームワークが何らかの形で採用・影響を受けている。
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Ruby on Rails
「MVC フレームワーク」の代表格。Controller と View の責務分担はあるものの、実装によって解釈がやや異なる。 -
Django(Python)
MVT(Model-View-Template)と呼んでいるが、構造上は MVC に近い。 -
ASP.NET MVC / ASP.NET Core MVC
Web アプリ用の典型的な MVC 実装。Controller を中心にルーティングとアクションを構成する。 -
各種 GUI フレームワークの初期実装
Smalltalk 系や古いデスクトップ UI フレームワークは、MVC の直接的な影響下にある。
✅ このスタイルを支えるデザインパターン
MVC そのものは構造スタイルですが、その内部では次のようなデザインパターンがよく使われる。
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Observer
Model の状態変化を View に通知し、再描画させる仕組みを実現する。 -
State
Model 内の状態に応じて振る舞いを変える場合に使われる。UI 状態の管理にも関与する。 -
Command
ユーザー操作(アクション)をオブジェクトとして表現し、Controller から Model への処理を整理する。 -
Mediator
複数の View や Model が絡む複雑な画面で、Controller がそれらの調停役として振る舞う。
✅ まとめ
MVC は、
- UI とロジックを分離するという思想の起点となったスタイルであり、
- 多くのモダン UI パターンのベースになっている。
現在のフロントエンド開発でそのまま採用されることは減ったが、
UI 構造を考えるときの原点 として知っておく価値がある。