🧩 Batch Pipeline
✅ このスタイルの概要
一定期間分のデータをまとめて処理する「バッチジョブ」を、複数ステージのパイプラインとして構成するスタイル。
✅ 解決しようとした問題
- 1 つのバッチジョブが巨大化し、何をどの順番でやっているか分からない
- 一部ステップだけ再実行したい/並列化したいのに難しい
- 障害時のリカバリポイントが分かりにくい
Batch Pipeline は、
「バッチ処理をステージごとに分解し、パイプラインとして設計する」
ことで、運用・保守・スケーリングを行いやすくする。
✅ 基本思想・ルール
典型的なバッチパイプラインのステージ例:
- 抽出(Extract)
- 変換(Transform)
- ロード(Load)
- 集計・書き出し
各ステージは:
- 入力データセットを受け取り
- 自身の責務を果たし
- 次のステージに渡す
という構造を取る。
実装形態:
- 1 つのプロセス内で順次実行
- 複数ジョブに分けてキュー・スケジューラで連結
- ワークフローエンジン(Airflow など)で DAG として定義
概念図(Conceptual Diagram)
✅ 得意なアプリケーション
- 日次/時間毎のバッチ処理
- ETL ジョブ(データウェアハウスへのロード)
- ログ集計・レポート生成
- バルクインポート/エクスポート処理
特徴:
- ステージ単位でのモニタリング・再実行がしやすい
- ステージごとのスケール戦略を立てやすい
❌ 不向きなケース
- ほぼリアルタイムの応答が必要な処理
- イベント駆動で常時動作すべきストリーミング処理
そのようなケースでは、Streaming Pipeline や EDA の方が向く。
✅ 歴史(系譜・親スタイル)
- 古くから存在するバッチ処理の実務知見を、パイプラインという形で整理したもの
- Data Warehouse / DWH 文脈の ETL パターンと密接
- 近年はワークフローオーケストレーションツールと組み合わさることが多い
✅ 関連スタイル
- Pipe & Filter:1 プロセス内のシンプルなパイプラインの原型
- Streaming Pipeline:リアルタイム処理への発展
- Data Architecture(Lambda / Kappa):バッチレイヤーとしての位置づけ
✅ 代表的なフレームワーク
Batch Pipeline はバッチワークフローを支える基盤として広く利用されている。
-
Apache Airflow / Dagster / Argo Workflows
DAG(有向非巡回グラフ)でパイプラインを組み、ステージごとの再実行や依存管理を実現。 -
AWS Glue / Google Cloud Dataflow(バッチモード)
ETL / データ変換処理を段階的パイプラインとして構築できる。 -
Spark(Batch Processing)
RDD / DataFrame によるステージ処理がパイプラインに相当する。 -
Airbyte / Fivetran(ELT ツール)
Extract → Load → Transform のステップを明確に構造化。
✅ このスタイルを支えるデザインパターン
Batch Pipeline の内部では、段階的処理と再利用を支えるために次のパターンが使われる。
-
Chain of Responsibility
ステージを直列につなぎ、順番に処理していく。 -
Template Method
ジョブの前処理・後処理、共通フローを統一化する。 -
Iterator
大規模データを逐次的に処理する際の補助として。 -
Strategy
ステージごとに異なるアルゴリズムを差し替え可能にする。
✅ まとめ
Batch Pipeline は、
- バッチ処理の複雑さをステージ分割で制御し
- 運用面(監視・再実行・リカバリ)も意識した構造スタイルである。
バッチが「1 つの巨大なブラックボックス」になりつつあるなら、
パイプラインとしての再設計 を検討するサインかもしれない。