責務が壊れる
Scope
対象は、判断・決定・変更に関する責務について、 構造として把握できない状況が観測されている状態である。 ここで扱うのは、特定の役職やプロセスの問題ではなく、 運用中に観測される破綻の型である。
Definition
責務が壊れるとは、何を誰が決めるのか、 どの判断がどの変更につながるのかといった関係が不明確となり、 判断の所在と理由を追跡できない状況が観測される状態を指す。
Symptoms(現れ方)
- 同じ種類の判断が、状況や人によって異なる基準で行われている状況が観測される
- 変更が行われた理由を、後から説明できない状態が観測される
- 技術的判断と業務的判断が、同一の文脈で混在して扱われている状況が観測される
- 問題発生時に、誰が何を決めたかを特定できない状況が観測される
Typical Triggers
- 判断基準や決定権限が明示されないまま、作業が進行している状況が観測される
- 変更理由がコードやチケットに残らず、暗黙知として扱われている状況が観測される
- 責務の境界が合意されないまま、役割や作業範囲が拡張された状態が継続している
- 迅速さを優先する判断が積み重なり、決定の記録が省略された状態が前提として扱われている
Diagnostic Questions(見分けるための問い)
- この変更は、誰の判断として行われたかを説明できる状態か
- 判断の基準や前提を、後から参照できる状態か
- 同様の状況で、同じ判断が再現される状態か
- 技術的判断と業務的判断が区別されている状態か
What This Is Not
- 特定のロールや個人の能力不足を指すものではない
- 組織文化や姿勢の是非を論じるものではない
- 単発の意思決定ミスを指すものではない