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🧩 Table Module

✅ このスタイルの概要​

「テーブル全体（集合）に対するロジックを 1 つのモジュールにまとめる」
というデータ中心の構造スタイル。
Active Record が “1 行＝ 1 オブジェクト” を中心にするのに対し、
Table Module は “テーブル＝ 1 モジュール” を扱う。

✅ 解決しようとした問題​

Active Record では集合（複数行）を扱う際にロジックが散りがちである。

  • 集計処理を書く場所がバラバラになる
  • バッチ処理・レポート処理の置き場所に迷う
  • 1 行の状態より データ集合全体に対する操作 が中心なのに表現しづらい

Table Module はこうした問題を整理し、
「集合的なロジックはこのモジュールに全部置く」 という明確な置き場を作る。

✅ 基本思想・ルール​

  • テーブル 1 つにつき モジュール/クラス 1 つ
  • モジュールは 行ではなく集合（テーブル全体） を扱う
  • 操作はテーブルに対する関数として定義する
    • 例：
      • findByStatus(status)
      • calculateMonthlyTotals()
      • bulkUpdateFlags(ids)
  • 主にクエリ・集計・一括更新など、データ処理寄りのロジックが対象

Active Record との役割分担イメージ​

ロジックの種類Active RecordTable Module
行単位の属性操作◎△
集計・検索・集合処理△◎

✅ 得意なアプリケーション​

  • レポートや集計処理が頻繁に存在する業務システム
  • バッチ処理が多いアプリケーション
  • データウェアハウスへのロード前処理
  • 大量データを前提とした集計／分析前処理

特に：

「このテーブルの集計処理はここを見れば全部分かる」

という状態を作りたい場面で非常に有効である。

❌ 不向きなケース​

  • オブジェクト中心で複雑なビジネスルールを扱う場合
  • 行単位での振る舞いや状態遷移が中心のアプリ
  • Active Record だけで十分な小規模 CRUD アプリ

✅ 歴史（系譜・親スタイル）​

  • Fowler の Patterns of Enterprise Application Architecture で定義
  • 「テーブル中心」発想の一種で、Active Record と兄弟関係
  • 集約オペレーションの置き場として実践的なパターン
  • Repository パターン（DDD）とは異なる領域だが、役割が似る場面もある

✅ 関連スタイル​

  • Active Record：行単位の操作に強い
  • Anemic Domain Model：データ中心の文脈でよく併発
  • Repository パターン：DDD の集合操作。思想は異なるが関係性は深い
  • CQRS の Read Model：Table Module 的な“ビュー用集合処理”が登場する

✅ 代表的なフレームワーク​

Table Module 自体を直接採用するフレームワークは少ないが、次のような文脈で自然に登場する。

  • Django ORM（集合操作）
    Django の QuerySet はテーブル全体を扱う操作が豊富で、Table Module 的利用がしやすい。

  • ETL / DWH 前処理（Airflow / Spark 前処理）
    集合ロジックを 1 モジュールにまとめる構造は Table Module 的設計に一致する。

  • バッチ処理系（Java/Spring Batch, Node.js scripts）
    テーブル単位で集計・一括更新処理を書く場合、自然と Table Module になる。

✅ このスタイルを支えるデザインパターン​

  • Facade
    集合処理（集計・検索・一括更新）の“入口”として働く。

  • Template Method
    集計処理やレポート処理で共通ステップを統一するときに便利。

  • Strategy
    集計アルゴリズムを切り替える場面で使用される。

  • Iterator
    大量データをストリーム的に処理する場合に役立つ。

✅ まとめ​

Table Module は、
集合的なロジックを一箇所に集約するためのデータ中心スタイル である。

Active Record を補完する形で：

  • 単一行の操作 → Active Record
  • 集合的な操作 → Table Module

という分担がうまく機能するケースが多く、
実務の CRUD ＋集計系アプリで特に効果を発揮する。