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構造の掛け合わせで広がる設計力

本章では、2 つのデザインパターンを意図的に組み合わせることで得られる設計上のメリットに着目する。現場のコードにおいて、デザインパターンが単体で完結することは少なく、複数のパターンが相互に補完し合う形で構成されることが多い

こうした複合利用のパターンは、「再利用性と柔軟性」「責務の分離と統一された流れ」「外部注入と内部制御のバランス」など、構造的な視点で設計の質を高めるヒントを提供してくれる。

本章の目的

  • デザインパターン同士の補完関係を理解し、再利用性・拡張性を向上させる設計を目指す
  • 実務で頻出する組み合わせパターンを通じて、複雑な設計を段階的に整理する力を養う
  • 単体パターンでは得られない構造上の工夫や抽象化のポイントを学ぶ

取り上げる組み合わせ(7 パターン)

組み合わせ概要
Strategy × Template Methodフローを固定し、可変処理を外部化
Observer × Mediator通知と調停による制御の分離
Command × Memento操作履歴の記録と復元
Facade × Iterator単純な窓口で複雑な集合処理を統一
Proxy × Strategyアクセス制御と戦略的処理切り替え
State × Strategy状態と戦略の柔軟な切り替え
Bridge × Strategy抽象と実装の分離+戦略注入

各ページの構成

  • 組み合わせの意図:なぜその 2 つのパターンを組み合わせるのか
  • よく使われるシーン:実務での応用例・想定される課題
  • UML クラス図:構造理解の補助として
  • コード例: 具体的な実装例
  • 解説:構造の目的・意図・利点を中心に解説

補足資料:3 つ以上の組み合わせについて

現実のプロダクトでは、3 つ以上のパターンが連携して設計を支えているケースも多い。ただし本章では、理解と応用のしやすさを優先し、2 つの組み合わせに焦点を当てている

これらの拡張的な構造については、章末の補足資料「📎 Appendix: 複合パターンの発展図」で整理しており、併用の進化パスや関係図を掲載している。

まとめ

複数のパターンを組み合わせることで得られる設計上のメリットは多く、単なるパターンの寄せ集めではなく、構造としての整合性をもたせることが重要となる。

本章を通じて、単体のデザインパターンでは得られない、より柔軟かつ現実的な設計手法への理解を深めてほしい。